ヨーロッパで誕生した、芸術舞踊であるクラシックバレエ。長い歴史の中で、衣装や振付、踊り方もすべて完成され、現代まで脈々と受け継がれています。ヨーロッパでは、映画のような感覚で多くの人に鑑賞されています。一方、日本では芸術というより、習い事としてのイメージが強くあります。

今回は現役バレエダンサーあり、バレエ講師でもある水野さんに、日本のバレエ文化の特徴や、バレエの魅力について伺いました。

水野陽刈|プロフィール
愛知県刈谷市出身。5歳のときに習い事としてバレエを始める。その後、豊田バレエ学校へ入学。2004年には、ウズベキスタンへバレエ留学をする。バレエ学校を卒業後は、フリーとして中部地区を中心に活躍。現在は、現役でバレエダンサーをしつつ、ひかるバレエ教室を開く。

本気になったのは、バレエ学校に編入したときだった

「ドン・キホーテよりバジルのVa」より


ーバレエを始めたきっかけを教えてください。

水野:私が5歳のときに、両親から習わされて始めましたね(笑)。高校生くらいから、真剣に打ち込むようになりました。しかし、その前までは実は嫌々でやっていました。「あぁ、今日はバレエがある日だ」と思っていた時期もありましたね。

ーなぜバレエを真剣に打ち込むようになったのでしょうか?

水野:バレエ学校に編入したことが契機でした。実は、普通の高校に1年通っていましたが、私には高校の勉強が全く面白いと感じませんでした。工業高校に入り、卒業したら就職して…と当時は思っていましたが、興味が湧かなかったですね。これからどうしようかと考えているときに、両親にバレエ学校を紹介されていたのを思い出しました。そして、「バレエ学校に行きたい」と両親に打ち明け、豊田バレエ学校に編入させていただきました。「バレエでこれからやっていこう」と心に決めたときに、バレエに対する向き合い方が変わりました。

ーバレエ学校時代に大変だったことはありましたか?

水野:周りのみんなが上手だったことです。編入した当初の僕は上手ではなかったので、上手な同級生に囲まれる環境は精神的に辛かったです。毎日レッスンがあるのですが、レッスン場には一旦、深呼吸をしないと入れなかったですね。しかし、辞めようと思ったことはなかったです。転入してまで入った以上、覚悟を決めて頑張っていました。

世界から見て、変わったあり方である日本のバレエ

「ジゼルよりペザントのVa」より


ーバレエ学校時代に、ウズベキスタンへ留学したと伺いました。数ある国の中でウズベキスタンを選ばれたのはなぜですか?

水野:バレエ学校がボリショイ・バレエの系列を教えていたからです。ボリショイ・バレエとは、ロシア系列のバレエです。豊田バレエ学校は、海外とのネットワークが豊富です。ウズベキスタンのバレエ団のダンサーの方がゲストとして呼ばれ、レッスンをしてくださることもありました。そのつながりで、ウズベキスタンへバレエ留学をさせていただきました。

ー留学に行って、日本と海外では違うなと思うことはありましたか?

水野:何よりも規模の違いですね。フランスやロシアでは、国がバレエ団を持ち、バレエ専用の劇場を持っています。日本ですと専用の劇場はあまりなく、どこかの会館を借りて公演しています。バックボーンそのものから違いますね。海外では、バレエダンサーは公務員のように扱われていますので、バレエダンサー一筋でも生活できます。日本ですと、バレエダンサー一筋でやっていくことができるのはほんの一握りで、なかなか厳しい環境です。

ー日本独特のバレエ文化と感じることはありますか?

水野:バレエ教室が多いところだと思います。日本におけるバレエは、女の子の習い事の印象が強いですよね。だから、日本では男性のダンサーが少なく、「バレエダンサーをやっています」と話すと珍しがられます。

ー海外と比べて、バレエ教室の数が多いのはなぜでしょうか?

水野:先ほどお話したように、バレエダンサー一筋で生きていくことの難しさです。大きなバレエ団に入って、バレエダンサーとして十分育ったら独立する形です。それが何世代も繰り返し、教室の数が大きく増えたのです。

バレエ教室は、子供たちにとっての出発点

ーバレエ教室はいつから始めましたか?

水野:2年前に開きました。私も年齢が上がってきて、いつまでも踊れるわけではありません。現役としての知識・経験を活かせれたらなと思っています。

ーバレエ教室に通いに来る子供は、プロを目指している子が多いのでしょうか?

水野:いいえ、全然いないですよ。私もそうでしたが、バレエを始めたときから、「プロを目指そう」と思う子はなかなかいないですね。「可愛いお洋服を着てみたい」とか、「スタイルが良くなりたい」という気持ちから入りますね。あるいは、友達がバレエをやっているのを見て、「私もやりたい!」と思って、教室に通い始めることもありますね。

ー教える側に立ってみて、大変だと思ったことはありますか?

水野:何も知らない子供たちに、「バレエとは何か」を教えることですね。現在、教室に来られる子供たちは、幼稚園児の子が中心です。子供たちにとって、初めてのバレエであるため、本当に基本的なことから教えています。「バーにぶら下がってはダメですよ」とか、「ジッと立つのですよ」とか(笑)。

非日常を味わえるのがバレエの魅力

「グラン・パ・クラシックよりVa」

ーバレエの魅力を教えてください。

水野:バレエをしていて、楽しいなと思うことが2つあります。1つはバレエを通して、何かしら自分を表現する踊りをすることです。

もう一つは、普段味わないような非日常の体験ができることです。バレエで使う衣装も多種多様なのですよ。バッチリ決まったカッコいい衣装を着ることもあれば、猫の被り物をすることもあります。また、舞台に上がったときの緊張感も非日常の体験だと思います。舞台に上がったときに、感じた緊張感が踊るにつれて、高揚感へと変わっていく時が楽しいですね。

ーバレエを楽しんで鑑賞するポイントを教えてください

水野:バレエを見るのも、オーケストラを鑑賞するのと同じように、少し知識をつけると面白さがわかってきます。なので、鑑賞する前には少し勉強するとより良いですね。そして、いつもよりもフォーマルな服を着て、髪を整えて会場に向かう。普段と違う高貴な雰囲気を含めて、楽しんで貰えればなと思います。

ーこれからの目標を教えてください。

水野:バレエダンサーとしては、主役、脇役に限らずいろいろな役を演じたいですね。脇役も意外と面白く、僕は楽しく踊っています。実は、今週は女形の役をやっていました。つけまつげを付けて、カツラを被って、シンデレラのお母さん役を演じていました。少し力強そうなお母さんみたいでしたね。

バレエの講師としては、舞台を作りたいなと思います。今はまだ生徒たちに、「そもそも、バレエとは何か」を教えています。子どもたちが成長し、バレエの魅力がわかってくる。そのときに、ようやく現役としてのスキルが活かせるのではないかと思いますね。そして、生徒たちに舞台に上げてあげたいなと思います!

【告知情報】
今回取材しました水野さんが出演する舞台が、2020年1月19日(日)に公演されます!
詳細な情報などはホームページにてご確認をお願いします。