競技ダンスとは、社交を目的とする社交ダンスとは異なり、演技における技術や芸術要素を競い合うスポーツ。男女がペアになっておこなうパフォーマンスが、音楽との調和性や動きの質・量など、さまざまな観点から評価されて点数をつけられます。プレイヤーの年齢層も幅広く、多くの人から愛されています。

日本での競技ダンスは関東のレベルが非常に高く、地方との間には差が存在するのが現状です。そんな中、地方・名古屋から全日本大会ファイナリストを目指す夫婦がいます。附田 優翼・奈緒美ペアです。

今回はおふたりに、競技ダンスを始めたきっかけや魅力などについてお話を伺いました。

2019年中部日本ダンス選手権アマチュアボールルーム優勝


附田 優翼・附田 奈緒美|プロフィール
(優翼)1990年生まれ、広島県出身。(奈緒美)1992年生まれ、香川県出身。現在名古屋在住の夫婦。両者とも大学1年生から競技ダンスを始める。現在は仕事をしながら、平日夜と土日に週5~6ペースで練習している。2019年名古屋インターナショナル準優勝、2019年大阪インターナショナル6位、2018・2019年中部日本ダンス選手権アマチュアボールルーム優勝。

広島・香川出身の2人、大阪でペアを結成


ーおふたりとも競技ダンスは大学から始められたのですよね。始めた経緯を教えてください。

優翼:大学に入ったら漠然と「でかいことをやりたい」と思っていました。小・中・高と7年間バスケをやっていましたが、ずっと補欠だったんです。その悔しさと「自分が活躍できる場を見つけたい」という想いがありました。それと、僕は広島の中高一貫の男子校で6年間過ごしたのもあって、どうせなら女性がたくさんいる華やかなところで活動してみたいと思っていました(笑)。

そんな中、大学入学後に競技ダンス部から勧誘を受けて、「競技ダンスは僕のやりたいことにぴったりだな」と思ったんです。

また、僕の大学の競技ダンス部は全国的にも強く、全国大会で優勝や準優勝になるほどでした。ほかのスポーツは高校まで経験して続けるものが多いと思いますが、競技ダンスだと大学で初心者から始めても全国優勝を狙えます。そんなところにも惹かれました。

奈緒美:私は大学の新歓にいろいろ行く中で、競技ダンス部に所属している同じ香川県出身の先輩にお世話になっていました。競技ダンス部の新歓で、普段はふざけているその先輩がびしっと踊るところを見たんです。その姿がとてもかっこよくて、私も入部することに決めました。

ーおふたりがペアを組まれたきっかけはなんでしたか?

優翼:僕が社会人になって初めての赴任地が大阪でした。ちょうどその時期、大阪の大学の競技ダンス部にお邪魔させてもらう機会があり、彼女と知り合いました。彼女とはお互いに気になっていて、彼女の部活引退をきっかけに「組もうか」という話になったんです。

競技ダンスはハモる瞬間が気持ちいい


ー競技ダンスの一番の魅力はなんだと思いますか?

優翼:僕が思う魅力は2つあります。1つめは男女がペアの競技であるからこそ、2人で出せる魅力がすばらしい点です。

よくテレビで見るようなダンスは、みんなが同じ動きをすることが多いと思います。しかし、競技ダンスでは2人でまったく同じことはしておらず、たとえば僕が右足を出すときは彼女は左足を出します。

男性と女性で違う動きをするなかで、1人では出せない魅力を出している感覚があって、それが気持ちいいんです。男女デュエットで、男性パートと女性パートがハモると「めっちゃいい!」と思うイメージに近いです。

ーもう1つの魅力はなんですか?

優翼:「敵と戦う」より「仲間と協力してつくり上げる」意味合いが強い点です。多くのスポーツの場合、極端にいうと「敵と駆け引きをして勝ち負けを決める」型が多いと思います。しかし、競技ダンスにはあまり敵という概念がなく、自分たち2人がいいパフォーマンスをしようとします。そして、それが客観的に評価される。

人を押しのけたり相手を倒したりするよりも、「2人でいいものをつくる」ことに喜びを感じられる競技なんです。

ー奈緒美さんが思う競技ダンスの魅力も教えてください。

奈緒美:2人で踊っているときに「一番いい」と思える瞬間があって、それが気持ちいいところです。なんというか……相手のエネルギーが私の体のなかを通して伝わってくる感覚なんです。もらったエネルギーは私が増幅させて、パフォーマンスに生かします。2人の空間が音楽にハマったら、すごく気持ちいい。

競技ダンスは内向的な性格を変えてくれた


ー競技ダンスを始めて感じた、ご自身の変化はありますか?

奈緒美:私は競技ダンスを始めるまではいつも聞き役で、自分の意見を言うことがあまりなかったんです。しかし、競技ダンスを始めてから……特に彼と組み始めてからは、自分の思ったことをズバッと口に出せるようになりました。言葉にすることに対する抵抗感や壁がなくなった感じです。

ーなぜ、競技ダンスを始めることでそうなれたのでしょう?

奈緒美:「2人の世界をつくるために、誰かに勝つことではなく自分の長所を高めることを考える」という、競技ダンスの特徴のためだと思います。相手の言いなりになったパフォーマンスは相手だけの世界であって、2人の世界ではありません。間違っていてもいいから思ったことはすべて伝えないと、いいパフォーマンスはできないんです。

優翼:競技ダンスでは2人でひとつのものをつくり上げるため、自分の感じていることを言葉にして相手に伝えなければいけません。それはとても難しいのですが、二人でダンスの練習を繰り返すうちに彼女はどんどん意見を言ってくれるようになりました。日常生活でも、怒るときに今までは「もう!」で終わってたのが、「なぜ」「どう」怒っているのかを伝えてくれるようになったんです。

そういう彼女の変化もあって、僕は彼女の意見を以前より聞くようになりました。今までは僕が「こうしたい」と言うばかりでしたが、2人でつくるパフォーマンスなので、僕も彼女の意見に耳を傾けなければいけないと改めて思いました。

隔月開催のプロ・アマ合同練習会


ー競技ダンスは地方と関東でレベルの差があると聞きましたが、そうなんですか?

優翼:はい。2019年6月に開かれた全日本大会の結果がいい例です。アマチュア部門で準決勝に進出した14組のうち、1位から13位までが関東のペアで、14位にかろうじて関西のペアが食い込みました。

私たちはそれぞれ出身が広島と香川、そして2人でダンスを始めたのが大阪でした。僕は東京の大学に通っていて、当時ともに活躍していた人たちは、社会人になってからも関東で活躍しています。僕はただそれを傍観するだけなのが悔しくて。

そうして、「関西出身ペアで今は名古屋在住の私たちが、関東に一矢報いたい」という気持ちが日に日に強くなりました。

ー地方の名古屋勢が関東勢に勝つために、なにか取り組みはしているんですか?

優翼:競技選手同士で切磋琢磨しながら練習できる場が欲しいと思い、隔月でプロフェッショナル・アマチュア合同の練習会を企画しています。

近い形式のアマチュア練習会は、関西でも先輩方が企画されていたのですが、名古屋に引っ越してきたときに似たものがなかったんです。「じゃあ自分たちでつくろう」ということで、友人などに声をかけて2018年7月から練習会を始めました。

最初はアマチュア中心でやっていましたが、今では大変ありがたいことにプロ・アマ合わせて約40名以上の方に参加いただけるようになりました。参加してくださる年齢層も10~50代まで幅広いです。告知は練習場にチラシを貼らせてもらったり、口コミで広めてもらったり。基本的には公式Facebookでやっています。

名古屋は競技ダンスに恵まれた環境、ぜひ競技会へ


ーおふたりの目標を教えてください。

奈緒美:2人の目標は、全日本の大会で決勝に入ることです。

私個人としては、中部地区の大学リーグで競技ダンスをする学生たちを応援したいですね。彼らを応援しつつ、ともに切磋琢磨していきたいと思っています。

また、その子たちが大学卒業後も続けてくれたら、中部に若手が増えることになってより盛り上がるのではないでしょうか。私たちはいつ転勤するかわからないので、隔月の練習会も若手が引き継いでずっと続けてくれたらいいなと思います。

優翼:僕個人の目標は、競技ダンスに打ち込んでいる今この時間を楽しむことです。たまにふと、こんなにダンスばかりしていていいのかと思うことがあるんです。周りには仕事で大きな成果を出していたり、子供を産んだりしている同級生がいる。

そんな中でも、自分の選択が正しかったと自信を持って言いたい。僕たちはレッスンや海外を含めた遠征に月10万ほど使っており、正直生活は大変です(笑)。でも、それほど競技ダンスに全力を注ぎ、後悔がないようにやりたいと思っています。

ー最後に読者にメッセージをお願いします。

附田:競技ダンスはよく「姿勢が良くなる」「痩せる」と言われますが、あれは本当です(笑)。そうやって健康にも良いので、いくつになっても趣味として続ける人が多い競技です。

奈緒美:競技ダンスは敷居の高いものではないです。ドレスを着て派手な化粧して、音楽も大音量で……と、最初は足を踏み入れにくい世界だと思います。なので、まずは競技会を見にきて、肌で熱気を感じてもらえたら嬉しいです。

優翼:特に名古屋は競技会の会場に恵まれていて、年に1~2回は栄の中心で(ナディアパークなど)開かれることもあるんです。ほかにも入場料無料の大会もあるので、そういう行きやすいところにまずは行ってみて欲しいです。

また、名古屋には20~30代を中心とした若い同年代が集まって、競技ダンスを習ったり教え合ったりするサークルがあるんです。そこでは競技ダンス以外のイベントも楽しめますし、初心者の人も多いです。そういう若い方向けの入りやすいサークルがあるので、よかったら足を運んでみてほしいです。

※写真提供…Kaoringworks 様、安藤 貴洋 様、古閑 優花 様、Dylan foto 様