日本は世界大会で何度も優勝経験のある、ダブルダッチ強豪国です。しかし、この事実は意外と知られておらず、日本でダブルダッチはいまだマイナースポーツと呼ばれる立場にあります。

大学生からダブルダッチを始めて世界2位に輝いた経験もある森 公亮(KO-SUKE)選手は、子どもたちからダブルダッチを広めようとさまざまな活動をしています。その一環として、2018年4月には名古屋市守山区でダブルダッチスクール「DDFAM」を、妻のKE-KOさんとともに開きました。

DDFAMのコンセプトは、子どもたちの「生きる力を育てる」こと。それはどういうことなのでしょうか。ダブルダッチの魅力や普及活動の内容とともに伺いました。

ダブルダッチとは


Double Dutch Delight Japan 2018 「パキラ」 NOVICE部門 優勝

ダブルダッチは、3人以上でおこなう2本のロープを使ったなわとび。2人のターナー(回し手)が右手のロープと左手のロープを半周ずらせて内側に回し、そのなかをジャンパー(跳び手)がさまざまなパフォーマンスをしながら跳びます。

ダブルダッチには、スピード、規定、フリースタイル、フュージョンの4種目があります。なかでもフュージョンは、音楽に合わせてチーム独自の演技をおこなうエンターテイメント性の高い種目です。

DDFAMのスクール生「パキラ」はこのフュージョンで、2018年12月に初めて世界大会の舞台に立ちました。

KE-KOさん(写真右)は元ダンサーで、ダンスや衣装は全面的に任せているそう。森さん(写真左)「嫁には本当に感謝しています(笑)」。


森 公亮(KO-SUKE)|プロフィール
1990年生まれ、愛知県名古屋市出身。同志社大学のダブルダッチサークル「S’il vous plait!」でダブルダッチを始め、3年生で世界大会「Double Dutch Cotest World」出場を果たし、翌年は同大会で3位に。また、世界大会「American Double Dutch League」ではシングル部門で3位、ダブルス部門で2位に輝く。現在はダブルダッチスクール「DDFAM」を運営。愛知県ダブルダッチ協会理事も務める。

世界2位になって痛感した、日本のダブルダッチの現実


ーダブルダッチを始めたきっかけを教えてください。

森:大学に入学していろいろな部活やサークルを見学したなかで、ダブルダッチサークルに出会いました。ダブルダッチはマイナースポーツがゆえに幼いときからやっている人が少ないので、努力次第で世界大会に行ける可能性もあるところが魅力でしたね。

もともと、私は小学2年生から高校3年生までクラブチームでサッカーをしていました。当時は本気でプロのサッカー選手を目指していたのですが、高校3年のときに怪我で、その夢を諦めました。

サッカーがうまかった同期たちは大学でも活躍するのだろうなと思うと、本当に悔しかったです。自分もなにか熱中できるものを探そうと、浪人を経て大学へ進みました。

そのため、純粋に「ダブルダッチが好き」というよりは、サッカーを諦めた悔しい思いを晴らしたいという意地からダブルダッチを始めたんです。

ーそこからダブルダッチにのめり込み、大学4年生では世界大会で2位になりました。ダブルタッチでプロを目指そうとは思わなかったのですか?

森:もちろん、思いました。実際、大学を卒業して1年間はプロになろうと試行錯誤していましたが、やはり私はダブルダッチの環境を変える側になろうと思ったんです。

ーそれはなぜでしょう?

森:私が世界2位になったのと同じ時期に、フィギュアスケート選手の浅田真央さんが世界6位になりました。私と同じ年の浅田選手は世界6位で日本中から注目を浴びたのに、2位の私はまったく注目されなかった。そのときに、ダブルダッチというスポーツの現実を痛感したんです。

私の後にもプロのダブルダッチプレイヤーを目指す人は出てくるだろうけれど、その人はダブルダッチだけで生活していけないのかもしれない。そのため、日本のダブルダッチ界を変える人間にならなければと思いました。

ダブルダッチでハッピーになれる、自分に自信もつく

DDPARKの様子


ーダブルダッチ体験会「DDPARK」を始めたきっかけを教えてください。

森:誰でもダブルダッチができる機会をつくろうと、私が個人的にダブルダッチ体験会を始めました。

それまでに子どもたちにダブルダッチを教える機会が何回かあったのですが、そこで子どもたちがダブルダッチを楽しんでくれても、それ以降は続かないという課題がありました。原因はダブルダッチのロープを回すには技術が必要ですし、家に帰っていざやろうとしても1人ではできないからです。

そこで、毎月第2日曜日に矢場町・若宮広場で、私が個人的にダブルダッチ体験会を開いたところ、多くの方が来てくれるようになったんです。

ーDDPARKの人気が、ダブルダッチスクール「DDFAM」に繋がったのですね。DDPARKの参加者からは具体的にどのような反響があったのでしょうか?

森:DDPARKを始めて2年ほどで、「月1回じゃなくてもっとやりたい」「もっとうまくなりたい」という声をいただくようになりました。

また、関西や東京だけでなく、私の地元名古屋からも日本代表を出したいという思いがあり、2018年4月に名古屋市守山区でダブルダッチスクール「DDFAM」を開いたんです。

画像|「DDFAM」公式HPから引用


ープレイヤーから講師の立場になったことで、難しく感じることはありますか?

森:プレイヤーだと、自分が出したパフォーマンスで失敗しても、自分の責任だから仕方ないと考えます。

しかし、講師である今は私が生徒に教えたパフォーマンスでうまくいかなかったとき、観客にガッカリされるのは子どもたちです。プレイヤーのときには感じなかったプレッシャーを、講師になって初めて感じるようになりました。

ー森さんにとって、ダブルダッチの一番の魅力を教えてください。

森:パフォーマンスをしていると自然とハッピーになれるところです。たとえば、入学試験に受かったときなど最高にハッピーなとき、思わずジャンプしませんか?ジャンプすることで気分もハッピーになると私は思っています。小学生に教えているときも、子どもたちはずっと笑いながら跳んでいるんですよ。

また、跳べたら自信に繋がるところもダブルダッチの魅力ですね。私が小学校に教えにいったとき、「誰か実際にやってみましょう」とステージに上げた生徒がたまたま不登校の子でした。その子は初心者にも関わらず上手に飛ぶことができ、みんなから歓声を浴びました。実はその後に不登校じゃなくなったんですよ。

ダブルダッチは子どもたちが社会で強く生きるためのツール

ー小学校での授業やDDFAM、DDPARKのほかに、ダブルダッチの普及活動はどのようなことをしていますか?

森:イベント出演や、学生サークルづくりに加えて、ダブルダッチ経験者で名古屋在住のメンバーを集めた「AMPHIBIAN」という社会人チームの代表も務めています。

AMPHIBIANは世界大会を目指すというより、「大人がやるダブルダッチを見たい」という要望があったときに出演するためのチームです。私個人での出演も含めて、少なくとも月1回はイベントに出させてもらっています。

2024年パリオリンピックの競技にブレイクダンスが加わったように、普及を進めることでダブルダッチもオリンピック種目に加えたいです。私が直接的に貢献するのは難しいかもしれませんが、東海エリアの競技人口を増やす手助けくらいにはなりたいなと。

ー森さんのダブルダッチにおける目標はなんでしょうか?

森:プレイヤーとしての目標は、50歳まで……あわよくばもっと飛び続けることです。

指導者としては、スクールを大きくしたいというより、ダブルダッチに触れたことのある子どもたちを増やしたいと思っています。そして、子どもの「生きる力」を育てたいです。

ー「生きる力を育てる」は、DDFAMのコンセプトですよね。どういう意味か詳しく教えていただけますか?

森:私が考える「生きる力」は、問題にぶつかったとき、「どうすべきか」と「どうしたいのか」を自分の頭で考えて動くことです。

たとえば、「ダブルダッチで勝ちたい」という目標があったとします。達成するためには「どういう練習をすべきか」を考える。「こういう練習がしたい」と思う。「その練習をさせてもらうために、自分たちはどう動けばいいか」をまた考える……。このように、目標までの過程を子どもたち自身で導きだして実行してもらうんです。

練習後のミーティングでは森さんとKE-KOさんから、褒め言葉だけでなく厳しい言葉も。「生きる力を育てる」方針のもと、子ども相手でも大人と同じように接します。


ー目標や練習内容について、子どもたちが考えられるようにサポートするのですね。

森:DDFAMでは基本的に「こちらからは教えない」スタンスです。もちろん、練習メニューや伸びるポイントはすでに考えてありますが、子どもたちが自ら「ダブルダッチを教わりたい」という意志を見せないと意味がない。その方が子どもは学んだことを吸収しますし、やりたいことがあるなら、ダブルダッチに限らず生きる上でそういう姿勢であるべきと思うからです。

また、DDFAMのスクール費は、子どもたちから直接現金で受け取っています。そうすると、子どもは親にお金を払ってもらってスクールに通えていることがわかりますよね。そのため、子どもたちがスクールをサボることもありません。

ー「こちらからは教えないスタンス」「スクール費は子どもたちから現金で」……そういう経験から自分で考えて行動する「生きる力」が身につくと考えているのですね。

森:日頃から自分の頭で考えることで、礼儀などほかにも学べることがあると思います。子どもたちには「当たり前」を極力なくして、いろいろなことに感謝する人間になってほしいです。

ー名古屋のダブルダッチに興味のある方、知らない方に向けてメッセージをお願いします。

森:ダブルダッチは難しそうと思われがちですが、難しいのはロープを回す方で、実は跳ぶのは簡単です。ぜひDDPARKへ来て体験してみてください。

私はダブルダッチは中毒性のあるスポーツだと思っています。それほど楽しくて、一度やるとハマってしまうんです。ぜひみんなでやりましょう!

DDPARKの集合写真


▼DDPARK
日時:毎月第2日曜日。14:00~15:30は初心者向け、16:00~17:30は経験者向け。
場所:矢場町の若宮広場
参加方法:飛び入りOK、無料で参加でき、参加者が70~80人になるときも。興味がある方はDDFAMのFacebook、Instagramをチェックしてみてください!

Facebook:https://www.facebook.com/ddfam.ngy/
Instagram:https://www.instagram.com/ddfam_official/