2015年、ラグビーワールドカップイングランド大会・グループB開幕戦。当時世界ランク13位の日本代表が3位の強豪・南アフリカ代表に、ラストプレーで逆転勝利したのは記憶に新しいでしょう。

この試合は「世紀のジャイアントキリング(番狂わせ)」として世界中のメディアで報道され、日本国内においてもラグビーというスポーツに注目が集まりました。ところが、2015年から2017年までに日本ラグビー協会登録者数は5,893人減少しており、この盛り上がりを競技人口増加に繋げられませんでした。

そんな中、日本のラグビー界に新風を吹かせようとしているのが、木村 貴大選手です。過去に中学・高校の全国大会で優勝し、U-18・U-20日本代表に選出された経験もあります。社会人になってからはトップリーグチーム「豊田自動織機シャトルズ」に所属し活躍していました。

しかし、夢を追いかけて2019年1月に会社を辞め、3月からラグビーの聖地・ニュージーランドで挑戦することを決意。さらに、現地での生活費の支援をクラウドファンディングで募るという新しい試みを行います。

なぜそのように挑戦し続けられるのか、何を目指しているのか。木村選手にお話をうかがいました。

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木村 貴大|プロフィール
1993年生まれ、福岡県北九州市出身。7歳からラグビーを始め、全国ジュニアラグビーフットボール大会優勝、全国高校ラグビーフットボール大会3回優勝、全国大学選手権準優勝、U-18・U-20日本代表選出など多数の実績を持つ。2016年に株式会社豊田自動織機に入社し、トップリーグチーム豊田自動織機シャトルズに入団。2019年1月に豊田自動織機を退社し、3月からはニュージーランドで挑戦する。
 

ラグビー日本代表になるために、前人未到のMitre10カップ優勝を目指す


中原:ニュージーランドでの挑戦について詳しく教えてください。

木村:2019年の1月に豊田自動織機を辞め、3月からニュージーランドのクラブチームに所属してプレーします。そこで活躍して、Mitre10カップ(ニュージーランド州代表選手権)のメンバーに選出され、優勝することが直近の目標です。

中原:Mitre10カップのメンバーに選出された日本人は、これまでに7人しかいないんですよね。そして、優勝した日本人は1人もいないのだとか。

木村:はい。そのため、Mitre10カップでメンバー入りして優勝することができたら、世界的にも注目されて、私の夢に近づきやすくなると思いました。

中原:その夢とは何でしょうか?

木村:2023年のラグビーワールドカップフランス大会で、日本代表として出場することです。

中原:ニュージーランドへの挑戦は、その大きな夢に繋がる第一歩なのですね。挑戦しようと思ったきっかけは何だったんですか?

木村:もっと上を目指すために環境を変えたいと思ったんです。また、2017年にニュージーランドへラグビー留学に行った経験も、自分の中で大きなきっかけになりました。

ニュージーランド留学での写真


中原:ニュージーランドへのラグビー留学について、詳しく教えてください。

木村:ニュージーランドは「ラグビーの聖地」とも呼ばれていて、ラグビーが世界トップクラスなんです。そのため、クラブチームもそれぞれハイレベルで。留学中、私はあるクラブチームに所属してプレーしていたのですが、そのチームの中でも自分のラグビーが通用した感覚があって、自信に繋がりました。

それから、ニュージーランドのラグビー愛が強い文化と、人の温かさに魅力を感じました。ニュージーランドでは本当に多くの人がラグビーを好きで、自分の町のチームを一生懸命応援するんですよ。

中原:ニュージーランドで挑戦すると決めたとき、家族やシャトルズのメンバー、監督からは何と言われましたか?

木村:家族からは、「後悔しないように、自分のやりたいようにやれ」と背中を押してくれました。昔からそうなんです。シャトルズのメンバーも、「君が決めたならそうするべきだ」と応援してくれました。監督には1年前から相談していて助言もたくさんくれて、ずっと応援してもらっています。

中原:今回の挑戦は周りの人に支えられている面も大きいのですね。
 

クラウドファンディングで「やりたいことをして生きられる」ことを証明したい


中原:今回の挑戦で、クラウドファンディングを利用するに至った経緯を教えてください。

木村:ニュージーランドに行くことは2018年の3月から決めていました。それから貯金や英語の勉強を始めたのですが、9月に足の骨を折ってしまい、入院することになってしまって……。入院中は英語の勉強や、読書、ネットを見るなどして過ごしていました。

そんなある日、ネットでクラウドファンディングを知ったんです。これを、自分のニュージーランドへの挑戦に活かしたいと思いました。お金を得たいというよりは、「自分の名前が広まってほしい」「自分の力でどこまでできるのか知りたい」という気持ちが大きかったですね。失敗するか成功するかは気にしていません。自分の中では、クラウドファンディングをやることそのものに意味があると思っているので。

中原:会社を辞めてニュージーランドへ行く、クラウドファンディングをする、このように挑戦し続けられるのはなぜですか?

木村:会社を辞めてまでニュージーランドへ行く挑戦の根幹にあるのは、「絶対に日本代表になりたい」という思いです。日本代表になることは、私がラグビーを始めた7歳のときから抱き続けてきた夢なんです。それを叶えるために、若いうちにできるだけ挑戦して、納得がいくまで努力すると決めています。

中原:クラウドファンディングの挑戦には、どのような思いがありますか?

木村:「やりたいことをやって生きる」のは可能だと証明したいんです。高校のときに一緒に全国優勝したチームメイトの中には、ラグビーを辞めてしまった人も多いです。彼らに話を聞くと、「ラグビーを辞めたのに仕事も中途半端で、人生が面白くない」と言うんです。日本全体でも「仕事や家庭がある」「お金がない」などの理由で、やりたいことがあっても諦めてしまう人が多いのではないかと思いました。

そういう人に私の挑戦の過程をクラウドファンディングを通して見てもらって、「自分もやりたいことができる」と感じてほしい。私と一緒に夢を追ってほしい。やりたいことをやって生きるのとそうじゃないのとでは、人生の中身が大きく変わってくると思うんですよ。
 

「14年間続けてきたポジションを変える」その決断も夢のために

フランカー時代


中原:木村選手は大学3年生の春に、フランカーからスクラムハーフへポジションを変更したと聞きました。それはなぜだったのでしょうか?

※フランカー:FW(フォワード)のポジション。アタックのあらゆる局面に積極的に参加して味方をサポートし、体で相手陣を押し崩す。
※スクラムハーフ:BK(バックス)のポジション。FW陣からボールを受け取りBKへパスするのが主な役割。攻撃の起点となるため「司令塔」とも呼ばれる。

木村:大学2年生の頃はU-20日本代表にフランカーとして選ばれました。しかし大学のチームの中では、私はフランカーにしては身長が低いこともあり、スターティングメンバーに入ることがなかなか難しかったんです。

それで悩んでるときに、監督から「日本代表を目指すならスクラムハーフに転向しないか」と言われました。フランカーで日本代表を目指すのは体格的に厳しいと、自分の中でも限界を感じていたので、スクラムハーフになることを決意しました。

中原:約14年間続けてきたポジションを変更するのは、きっと大変でしたよね……。

木村:そうですね。休みの日は医学部ラグビー部の練習に参加して、スクラムハーフの練習をやらせてもらっていました。他のチームメイトよりもラグビーに時間を費やしたと思います。

現在はスクラムハーフとしてプレー


中原:スクラムハーフというポジションは、フランカーと比べてどう感じますか?

木村:とても楽しいですね。なぜなら、スクラムハーフの仕事の方がチームの勝敗に関わることが多いからです。また、メンバーの中にフランカーは2人ですが、スクラムハーフは1人です。そのため、プレーの内容的にも物理的にも、スクラムハーフの方が重要度が高いポジションだと感じます。私の中では、フランカーとスクラムハーフが別競技くらい違うと思っているほどです。

それから、スクラムハーフはFW(フォワード)に指示を出すことも多いのですが、そういうときにフランカーの経験が活きていると感じます。日本代表になることもそうですが、「世界一のスクラムハーフになる」ことも私の夢です。
 

自分の挑戦を見て、大きな夢や目標を持って生きる人が増えてほしい


中原:「世界一のスクラムハーフになる」ことも木村選手の夢なんですね!なぜそのように夢を大きく持ち、突き進んでいくことができるのでしょう?

木村:私の好きな言葉に、“自分の持った夢に、自分の人生は概ね比例する”という言葉があります。つまり、夢は大きければ大きいほど、人生に大きな影響をもたらすということです。

この考えがあるからこそ、私は「世界一のスクラムハーフになりたい」と本気で思っています。そのためには、誰よりも努力してラグビーと向き合わなければなりませんが、私にはそれができますし、それほどまでにラグビーが大好きです。

中原:木村選手は今回の挑戦を通して、人々に何を伝えたいですか?

木村:私はたくさんの人々に、「大きな夢や目標を持って生きてほしい」と思っています。それだけでなく、「夢や目標のために、考えて行動する過程そのものまで楽しんでほしい」。もちろん私自身も、今回の挑戦でそうなると固く決めています。

挑戦する過程で、成功することも失敗することもあるでしょう。それでも夢に向かう私の姿を見て、「自分もやりたいことをやろう」と思える人がいてほしい。

だからこそ、今回の「ニュージーランドでの挑戦」「クラウドファンディング」を通して、私の生き様を多くの方々に見て頂きたいんです。さらに、ラグビーを好きになってくれる人がいれば、それ以上に嬉しいことはありません。